サカキブラグ

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カードキャプターさくら さくらとさくらカード後継者問題 その1

※作中の一部設定はオリジナルです。

※ネット上に存在する説と組み合わせて設定しました。


     ※


『……クロウ……どうして……?』


 1人の女がいた。


『どうして……私の……』


 それは、世界で1番強い魔術師と呼ばれた当時の彼――クロウ・リードにとって。


『……私の、刻を……止めたの……?』


 唯一、心を許せた異性だった。


『ち、違う……ッ!!』


 女はクロウに、蔑み。失望。悲しみ。驚愕。

 あらゆる感情がない交ぜになったかのような視線を向ける。


 対するクロウは、彼と彼女が創り出した存在達ですらも見た事も無いほど。

 ただただ、狼狽するばかり。


 彼女はこれから、死ぬはずだった人間。


 しかしその運命を、クロウは、無意識の内に――覆してしまった。



『もう1度、目を開けてほしい』



 そんな、誰もが望む願いを。

 彼が持つ、膨大な魔力によって。


 女は、感じていた。

 自分の〝刻〟が止まった事で、本来自分によって埋まるはずだった、死すべき者の座るべき席が、自分が生き延びた事によって空席となり、それを埋めるべく、代わりに別の世界の自分達が、死の運命にさらされ続けている事を。

 しかし例え別の世界の自分であっても、非情なる死の運命は満足などせず、自分以外の、全ての自分を犠牲にしてもなお、死の運命は自分の死を求めている事を。

 しかし、それでも自分は死ぬができず、その歪んだ〝刻〟の流れが、自分とは関係の無いあらゆる者達の運命さえも捻じ曲げ続けている事を。


 一方で、クロウは思っていた。


『まだ、だ……まだ間に合う』


 それは、本当は望んでいない事。


『今からでも遅くない……今からでも殺せば……ち、違う!! 私は!! 私、は……』


 望んでいないからこそ、さらに混乱する。


 失いたくない。

 しかし殺さなければ、世界が歪む。


 彼女を選ぶか。

 世界を選ぶか。


 その究極の二択の果てに、彼は……彼、は……。


     ※


 そんな夢を、彼は見た。

「……まさか、今さらあの時の夢を見るなんて……」


 むかしむかし、1人の女を生かし続けてしまったクロウ・リードの生まれ変わりである柊沢エリオルは、珍しく顔から冷や汗を流し、今まで誰にも見せた事もないくらい、哀しい表情をしながら、言う。


「もしかして……もうすぐ〝刻〟が、動くのかな?」


     


 私立友枝中学校。

 私立友枝小学校を創設した理事会が同じく創設した、別の学校。

 友枝小学校に通っていたほとんどの児童の進学先であり、同時に中学生となった木之本さくらや李小狼、大道寺知世など、かつて友枝町で起こった様々な怪異。

 すなわちクロウ・リードの魔導遺産であるクロウカード(現さくらカード)や、そのクロウ・リードが引き起こした事件に関わった数多くの、さくら達の同級生が通う中学校。


 そんな中学校にて、今日、1つの問題が浮上した。


 キッカケは、大道寺知世の一言。


彼女が昼休みの昼食の席にて、自分の大の親友にして母方の従姉妹であるさくらと、その恋人である小狼に放った、ある一言。


「そういえば、さくらカードはこれから先……どうなるのでしょうか?」

「……ほえ?」

 いきなりな質問に、ワケが解らないと言いたげな顔をするさくら。

「……いきなりなんだ? 大道寺」

 小狼もその質問の意図が解りかね、頭上に疑問符を浮かべた。


「いえ、ですから……」

 知世はそんな2人に真剣な眼差しを向けながら、話を続ける。

「そもそものカードの持ち主は、魔術師のクロウ・リードさんで、さくらちゃんはそのクロウ・リードさんの生まれ変わりである藤隆さんのご息女様。という事は、順当に行けば、次のカードの持ち主はさくらちゃんと李くんのご子息様、もしくはご息女様という事になると思いますけど」


「「ブフォ」」


 食事中だったため、同時に吹き出すさくらと小狼。

 いろいろとすっ飛ばしていきなり子供の話をされれば当然の反応である。


 知世はそんな2人を見て、思わず微笑んだ。

 そしてクラスメイト達は、一斉に3人に注目した。


 3人はただ、苦笑するしかなかった。


 そして改めて、さくらと小狼は知世に訊ねる。

「と、知世ちゃん!? なに言ってるのいきなり!?」

「……大道寺、いろいろと早くないか……?」

「ごめんなさい、2人共」

 赤面し、慌てまくるさくらと同じく赤面した小狼に対し、珍しく知世は真剣な眼差しで言う。

「でも、見方によってはとても重要な話だと思いますわ」


「知世、ちゃん?」

「何か、思う所があるんだな」

 その顔からして、その内容がとてもとても重要な事である事を感じ取り、すぐに顔を元に戻すさくらと小狼。

 知世はそんな2人を交互に見ながら、ついにその疑問を口にする。


「ええ。そもそも魔力とは、遺伝によって継承されるモノなのでしょうか?」


「……遺伝、だけでは説明できないな」

 知世の質問に、小狼は答える。

「どういう事、小狼くん?」

「例えば苺鈴は、俺の従妹ではあるけど魔力は持っていない。逆にさくらのお父上……藤隆さんは柊沢と同じくクロウの生まれ変わりではあるけれど、最初は魔力を持っていなかった。

 にも拘わらず、さくらや、さくらのお兄さんには魔力が備わっていた。

 もしも遺伝によって魔力が継承されるのなら、苺鈴には魔力があって、さくら達には魔力など備わっていないはずだ」


「確かに、そう考えると……いろいろおかしいね」

「では、魔力はいったいどういう条件の下に、発現するのでしょう?」

「……これは、母上が言っていた事だが」

 小狼は難しい顔をしながら、話し出す。

「力は力を呼び寄せる、という言葉がある」


「あ、それ小狼くんのお母さんから聞いた事ある!」

「え?」

「え、どこでだ?」

 知世と、話を止められた小狼は一瞬、さくらが何を言っているのか解らなかった。

 だが、すぐにある事を思い出す。


「香港旅行に当たった時か」

「そういえば、その時に李くんのお母様達にお会いしましたわね」

「うん。いろいろ大変だったよね、あの旅行……そういえば、あの魔道士さん……クロウさんが生まれ変わっている事、知らなかったんだよね」

「ああ、そういえば…………藤隆さんが香港に来ていたら、真っ先に狙われただろうな」

「う、確かに……」


 全ての真実を知った上で、改めてあの時の事を思い返す小狼とさくら。

 確かに、クロウ・リードの生まれ変わりの片割れである藤隆が香港に来ていたら、あの女魔道士は藤隆をさらい、無理やりクロウ・リードとしての記憶を甦らせようとしたかもしれない。

 そういう意味では、藤隆が香港に来なかったのは正解だった。無論、エリオルの場合も同様である。

 いやむしろ、そうならないようにエリオルが藤隆を香港に行かせまいと暗躍していたかもしれない。


「すみませんが、お話を元に戻してもよろしいでしょうか?」

 とそんな2人に、知世から軌道修正の声がかかった。

 さすがに、誰もが見ても脱線のし過ぎである。

 小狼は1度咳払いをすると、再び話し出した。


「力は力を呼び寄せる……それは魔術の世界に於いて、とても重要な法則だ。とは言っても、その本質はいたって単純で、人が友達を求めるのと同じようなモノだ。すなわち魔力や、それに伴う怪異も、魔力を持つ者に惹かれて現れる。そしてそれは、魔術師の魂にも当て嵌まる可能性は、ある」


「えーと、つまり、お父さんは元々魔力を持っていたから、そんな魂に、私やお兄ちゃんの魂が惹かれて、お父さんのもとに生まれてきたって、こと?」


「ああ。魔術の世界じゃ、まだクロウがおこなった〝転生〟の仕組みは解析できていないが、簡単に言えばそんな感じだ。そしてこの、魂が惹かれる現象はめったに起こらない。そもそも魔力を備えた魂が、珍しいからな。だから同じ李家の人間であっても、苺鈴には魔力が宿っていなかった」


「じゃあ、エリオルくんのお母さんとお父さんも、魔術の関係者ってこと?」

「…………それは、分からない」

 小狼は難しい顔で告げた。

「詳しくは調べていないけど……もしかするとその可能性はある。なにせアイツはクロウのお父上の住んでいたイギリスの出身だからな。もしかすると、クロウのお父上の遠縁の家の……いや待て? アイツの苗字は日本の物だから……いや、そもそも、真名だったのか?」


 陰険眼鏡魔術師であるクロウ・リードの生まれ変わりの柊沢エリオルの事である。

 最初彼は全てを偽って転入してきたのだから、もしかすると名前も偽物であるかもしれない。

 どちらにせよ、クロウ・リードは相変わらず謎多き男である。


「まぁ、柊沢の事は置いておいて、とにかく魔術業界じゃそんな感じだ」

「そうですか……なら、ますます心配ですわ」

 小狼の説明の後、ますます真剣な表情になる知世。

 さくらと小狼は顔を見合わせ、首を傾げた。


 知世はそんな自身のように、未来への不安に思い至らない2人を見かねて、


「だって、もしも本当にそうならば、さくらちゃんと李くんの間に生まれるご子息様、もしくはご息女様が……さくらカードやケロちゃんやユエさんの魔力を維持し続けられるほど魔力が高いとは、限らないのではないですか?」


ついに、そんな2人でさえも自覚せねばならない、衝撃の仮説を口にした。


 当然ながら、次の瞬間―――2人に同時に衝撃が走った。


     ※


 そして時は流れて放課後。

 あれから、午後の授業中もいろいろ考えたさくらと小狼。

 だがどれだけ時間をかけても、すぐに出せる答えではなかった。


「はう~~……考えるだけで難しいよぉ~~」

「というか、俺達にはまだ早いんじゃないか?」

「いいえ、今のうちに考えておきませんと」


 自分達の子供の魔力の修行に力を入れる。

 しかし加減を間違えれば、今の時代で言う『虐待』になりかねない。


 李家などの魔術師の家系の、強い魔力の持ち主に預ける。

 カードを悪用しそうな、信用できない魔術師が紛れているんじゃないのか。


 などの論争が繰り広げられ、頭から湯気が出そうなほど考え尽くした2人に、知世は言う。


「だってクロウさんは、自分に死が近付いているのを分かってから、いろいろと、今でいう『終活』をなさったのでしょう? でもそれだと、思いっきり余生をお過ごしにはなれないと思います。それに……突然クロウさんの死の予言を知らされたケロちゃんやユエさんも、いきなりクロウさんにその事を知らされて、とても悲しかったと思います。ですので、今の内にできる事はやっておいて、改めて、自分の家族や友達と、余生をお過ごしになられた方が、幸せではないかと私は思います」


「…………うん。そうだね」

 知世の意見に、さくらは少し悩んだ末に賛同する。

「過去夢の中のクロウさん、それにケロちゃんとユエさん、悲しそうだったもん。今の内に、いろいろやっておいた方が、いいよね……。小狼くんはどう思う?」

「……ああ。そうだな」

 そして小狼も、心に決める。

「今の内に、自分が死んだ後の事を考えておくのはいいかもしれない。俺やさくらが死んだ事で、カードがただのカードになるのは……悲しいからな」

「うん。そうだね」


 こうしてさくらと小狼が知り合う事ができたのは、そもそもクロウカードの存在が在ったからこそである。

 そしてそんな思い出のカードが、普通のカードに戻ってしまうのは、2人としても看過できない事態だ。


 だからこそ、2人は改めて誓った。


 さくらカード、そしてその守護者であるケルベロスとユエの次の主。


 もしくは次の主を選定するための手段を、今の内に考えておこうと。


 中学生には重過ぎる問題かもしれない。

 けれど、さくらカードはあらゆる怪異を発生させられるトンデモ魔導具である。

 かつてクロウ・リードがそうしたように、次の、カードやその守護者達の主を選定するための手段を、今の内に考えておいて損は無いだろう。


 とその時であった。

 さくらの携帯電話が、突然鳴り出した。


「ほぇ? 誰だろ……あっ」

 いったい誰からだろう、と思いながら二つ折り携帯電話を開ける。

 すると、その画面には……グッドタイミングな事に、


「エリオルくんからだっ!」

「柊沢から?」

「まぁ、エリオルくんからですか……あ、そうですわさくらちゃん、かかってきたついでに、エリオルくんにお訊きになってはいかがでしょう?」

「え? 何を……あ、そうだねっ」

 知世からの助言の意味を、すぐに理解したさくら。


「お訊きにって……まさか、後継者問題についてか?」

「ええ。その手段を考えたクロウさんであれば、さくらちゃんに良いアドバイスをくださると思いますわ」

 そんな会話が知世と小狼の間で交わされている間、さくらはエリオルと話をしていた。


「もしもし、エリオルくん!?」

『おはようござ……いや、そちらはもう夕方でしたね。こんばんは、さくらさん。元気そうでなによりです』


 日本とイギリスとでは、9時間という時間差がある。

 故に日本では午後5時頃でも、イギリスでは午前8時頃なのだ。


『ケルベロス達も、元気にしていますか?』

「うん、ケロちゃんは今日も……多分ゲームに夢中になってると思うし、ユエさんもお兄ちゃんと一緒に大学に通ってるよ」

『それはなによりです。ところで、さくらさん……』

「?? なぁに、エリオルくん?」


 いきなり言葉が詰まったエリオルに対し、小首を傾げるさくら。

 訊ねられたエリオルは、まるで言葉を選ぶように、一言一言丁寧に話し始めた。


『実は……今週末……そちらに行こうかと思います』

「えっ!? そうなの!? じゃあ待ってるね!!」

『ええ、それで……「私」の正体を知っている者……桃矢くんには、別に話さなくても問題ないですね』

 一人称を『僕』ではなく『私』に変えて……。

 すなわち、さくら達の同級生としてではなく、クロウ・リードの生まれ変わりとして、話しかけてきた。


 それにより、どこか不穏な空気を感じ取ったさくらは……上がったテンションを下げ、改めてエリオルに問うた。


「どうしたの、エリオルくん?」

『……とにかく「私」の正体を知る者全員を、集めてくださいませんか?』

「それはいいけど……なんで?」

『そろそろ、話さなければいけないと思うんです』


 そして、クロウ・リードは……告げた。


『なぜ「私」が、魂を2つに分けたのか……その本当の理由を』





 


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by guroriasuh | 2018-04-01 20:00 | 二次小説 | Comments(0)

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